Physical Drawing Report

じゅんじゅん クリエイションワークショップ

Physical Drawing 報告レポート



 残暑厳しい825日土曜の夜、ダンスワークショップのショウイングを行いました。
振付家/ダンサーのじゅんじゅんが主催し、一夏をかけてソロダンスを創作するというテーマのもと、様々な経歴のパフォーマーが集まりました。
とある短編小説を題材にテキストからダンスを立ち上げるというちょっと新鮮なアプローチに参加者も興味津々。
題材はアメリカの作家バリー・ユアグローの「一人の男が飛行機から飛び降りる」(新潮文庫)から「宿命の女」「乙女」「スープの骨」「掘立て小屋」「子守歌」の5編を選び、その中からそれぞれ一つを選び作品にしました。
著作者と翻訳家から正式に許可をいただき、いざ創作へ。

ワークショップの様子

まず初日のワークショップではゲスト講師の寺内亜矢子さんが俳優の立場からテキストとの関わり方をレクチャー。参加者の大半はダンサーのため、テキストを題材に取り組むのも初めてといった人が多い中「書き手の呼吸を読む」「感情を入れずに言葉を通す」「書いてある通りに読む」といった具体的な作業からスタート。イメージを取る前にまず身体に入れるそのやり方に参加者は一様に興味を示し取り組んでいきます。
意外に難しかったのが「書いてある通りに読む」という手法で、その通りに読んでいると思っていても、句読点以外のところで自分に都合良く区切っていたりするのですね、実際は。それを丁寧に何回も読み返すことで作者(及び翻訳家)の呼吸を身体に入れていく。これは今更ながらの発見でした。
次の作業はテキストから一文選んで振付けをします。はやりイメージが強い文が身体を動かすようで、それぞれが選んだ文もどことなく共通項があるように見えました。面白いなあ。



そしてテキストを各自選んでもらい身体に起こしていきます。一口に身体に起こすと言っても様々なやり方があり決して正解は一つではありません。主人公の描写を演劇的に行う人。シーンを設定してその中で動く人。イメージから振付けを作ってくる人。極端にいえばその手法そのものがそれぞれの視点となっており、参加者の数だけ世界が立ち上がってきます。それは感動的な瞬間でもありました。
回を重ねつつモチーフに肉付けをしていきます。方向に迷いが生じて全く違うテキストを選び直す人も。


創作ブートキャンプ

毎週のワークショップではそれぞれ作ってきたものを見せあいディスカッションを行っていきました。印象批評から具体的なアドバイスに。曖昧な言葉をはっきりと。ねらいとしては見せる側より見る側の読み解く力の向上を目指しています。ダンスを読み解く力がなければ、作る手がかりも得られない。感覚的なものだけに言葉が必ず必要で、出来るだけ具体的に話し合っていきます。しかし、やはり言葉を使うのは難しいらしく最初は建設的な議論にならず印象の羅列に留まる傾向が。この辺りはこれからの課題でしょうね。


毎回自分の作業をレジュメにして提出するのも特徴です。自分が何に取り組んでいるのか。それにはどんな作業が必要か。どんな稽古をするべきか。はっきりまとめているひとほど見せる作品もはっきりしていました。その作品が面白いかどうかというより、何を目指しているかが明解なのです。他の参加者のそういった作業を見ながら自分の作業も検証していく。焦りつつもやるべき方向が見えてくる、そんな状態をしていつしか「創作ブートキャンプ」との別名がつきました。
それぞれの発表が終わると今度はグループごとにディスカッションです。
ひたすら話し込んでいる写真が多いのもそんなわけです。





本番当日



お客さんを迎えてのショウイング。気軽に見てもらいたいとの思いからお酒とご飯を出す形を取りました。
寺内さんがケータリングも手がけてくださって素晴らしいご飯が用意されました。これちょっと凄かったです。何とも手際よくフィンガーフードやらおにぎりやらを用意していく手腕に脱帽。テキストの朗読もしてもらったのですが、あんたいったい何人いるんだ!?というくらいの大活躍。ショウイングの空気をさりげなく、強力に底上げしてくれました。



肝心の本番はそれぞれが一番の出来だったように思います。はやり観客の前というプレッシャーは舞台に立つ我々に取って一番のカタパルトです。
本番は映像を撮っていたため写真を撮れなかったのが悔やまれます。
終わって観客と話し合う参加者たち。知らない人から感想をもらう人もいて、素晴らしいお土産をもらったようでこちらも嬉しいですね。



お酒とご飯の効果もあってパーティのような雰囲気でダンスを眺めるという贅沢な時間に「日本でもこういう空間作れるじゃん」と嬉しくなりました。
それがまさか銀座で出来るとはね。関係者のみなさま、多岐にわたるご協力ありがとうございました。
そしてご来場いただいたみなさま、ありがとうございました。
最後にウンウン唸りつつも大事な作品を作り上げた参加者の皆さん、本当にお疲れさまでした!

じゅんじゅん